村上龍 テニスボーイ・アラウンド・ザ・ワールド (2)

 ウィンブルドンテニス。本日の夜、クルム伊達の2回戦が行われる。

 テニス中継はもう何年も見た事がない。だが本日の試合は気になってしょうがない。相手はビーナス・ウィリアムズ、そして会場はセンターコート。通常は上位選手でなければセンターコートに立つ事は出来ない。しかし歴代2番目の年長勝利を記録した伊達と、過去5回優勝のウィリアムズなので注目度が大変高く、急遽センターコートになったらしい。どんな神様の悪戯なのか、ここで役者と舞台が揃ってしまったというわけだ。

 1996年のウィンブルドン準決勝、センターコートで伊達はグラフに敗れた。翌日順延という不運がなければと云われた試合、勝っていれば日本人初の決勝進出だった試合である。その2ヶ月後に伊達は引退を発表している。

 最近明るいニュースが皆無だ。特に政局と原発のニュースはもうたくさん。うんざりなのだ。これ以上見たくも聞きたくもない。伊達のニュースだけあれば十分。もうじき41歳になるという伊達、関口同様、心から応援したい。