村上春樹 ノルウェイの森 17

 「多くの僕の知り合いがそうしたように、人生のある段階が来ると、ふと思いついたみたいに自らの生命を断った。誰かがなんとしても彼女を救うべきだったのだ」。村上春樹「ノルウェイの森」。

 ハツミさんは、外務省に入省しドイツに赴任した永沢さんを追うことはせず、別な男性と結婚。そしてその2年後に剃刀で手首を切ります。ハツミさんの自殺を想像できた読者ってどのくらいいるんでしょ。死のオーラを発散し続けているような直子や、そのオーラに包み込まれようとしているワタナベくん・レイコさんならともかく、あのハツミさんまでもが。

 キズキと直子の自殺には連鎖性があり、しかもこの物語の根幹部分です。それとはまったく別のところで起こるハツミさんの自殺。この事が読者に与えたインパクトというのは、実はかなり大きいんじゃないですか。この作品のメインテーマをこれでもかと読者に擦り込むワケですから。

 「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」。