村上龍 テニスボーイの憂鬱 4

 村上龍は「テニスボーイの憂鬱」で、テニスボーイと吉野愛子の恋愛を象徴するモノとして電話ボックスを幾度も登場させます。携帯世代の皆さん、電話ボックスって何のことか分かりますか?

 携帯もメールも無い時代、しかも不倫なので、愛子さんとの連絡は全て公衆電話なんです。逢いたくて声が聞きたくて電話しても、愛子さんが留守だと、呼び出し音が永遠に鳴り続けるだけ。

 新興住宅地造成中の一角に、ただポツンとある電話ボックス。夜中に450SLCを走らせ、何度も何度も電話ボックスに立ち寄るテニスボーイ。2人をつなぐ唯一のラインとしての無機質な電話ボックスが、非常にせつなく身に染みます。

 再読した時、電話ボックスは作品全体をも象徴してる事に気づきました。たかが電話ボックス、されど電話ボックス。龍さん、スゴい!