村上龍 心はあなたのもとに (6)

 村上龍の小説に登場する若年層以外の主人公は、たいがいお金持ちだ。「心はあなたのもとに」の主人公・西崎もそうである。主人公がどのように生計を立てているのか。そしてどのようにして成功を掴んだのか。本筋とは関係のないこのような事も、僕は結構知りたい性質だ。

 今回、西崎の仕事のディテールは異様に詳しく書かれている。西崎はプライベート・エクイティ・ファンドを組成する仕事をしているのだが、ただ単に投資の世界で財を成しましたなどという説明で終わっていない。かなり踏み込んで仕事の内容が描写されている。そしてそれがかなり面白い。

 仕事でその人を判断するのがいい事かどうか不明だが、年齢が高ければ高いほど、やってきた仕事がその人の歴史そのものだったりする。小説の登場人物といえども、消費するだけの人物では魅力半減なのだと思う。

 そういえば西崎はフェラーリを所有していた。ワイドショー的にはこのフェラーリや、豪邸と思われる自宅も公開すれば完璧だったかもしれない。