村上龍 裏JMMの海岸 Q:931

Q:931
 野村ホールディングスはリーマン・ブラザーズのアジア・太平洋事業、欧州・中東地域の主要事業を買収し、東京三菱UFJフィナンシャルグループはモルガン・スタンレーに、みずほフィナンシャルグループはメリルリンチに、それぞれ出資をしたようです。買収と出資では性格が違うのでしょうが、基本的に日本の金融機関は、どういった利益を得ようとして、そのような投資をしたのでしょうか。またこの投資にはどのようなリスクがあるのでしょうか。

編集長 村上龍 ジャパン・メール・メディア

 村上龍 裏JMMの海岸。日本の金融機関による米金融機関への投資、これは投資というよりは、むしろ買い物に近いノリじゃないでしょうか?

 これら米金融機関は一種のブランドだと思うんですよ。日本人にとってみれば雲の上の存在のような非常に輝かしいもの、その象徴です。それがある時、気付いてみれば大安売りしてるじゃないですか。ルイ・ヴィトンのバッグが破格の安値で売られてたらどうします。必要でなくともとりあえず買いますよね、それと同じです。買わなきゃ損だという心理です。

 とは云っても、野村も三菱UFJもみずほも、みな上場企業、そのような本音を表沙汰には出来ないので、合理的と思われる理由を後から見つけてくるワケです。そしてその事自体がこの投資の最大のリスクになるんですよ。つまりいつの間にか本音の方を忘れて、後付の理由の方に振り回されちゃう、組織内に軋轢が生じ、体力だけが消耗していく。

 まぁ、安いワケですから、キャピタルゲインは狙えそうですけど!