村上春樹 ノルウェイの森 6

 村上春樹「ノルウェイの森」。自殺したキズキと高校時代に付き合っていた女性が直子です。キズキを中心に直子とワタナベくんの3人は、非常に多くの充実した時間を一緒に過ごします。ですがキズキの自殺によって、残された者達の音信も途絶えてしまいます。そして1年後のあの日、卒業後共に東京の大学に進学した2人は、東京の街で偶然に再会を果たします。

 恋人の自殺によって直子が背負ってしまったものは、親友の自殺によってワタナベくんが背負ってしまったものと同じです。ただしその重みはワタナベくんのそれよりも直子のそれの方が遙かに大きいワケです。

 作品全体に染み着いているような圧倒的な死のイメージは、既にこの世にいないキズキから発せられているというよりも、恋人の死をまるごと抱え込んで生きる直子から発せられています。非常に儚い女性です。

 村上龍で云えば「ラッフルズホテル」の萌子か、「タナトス」のレイコのようなイメージです。もちろん死に最も近いのは直子です。