村上春樹 ノルウェイの森 20

 村上春樹「ノルウェイの森」。レイコさんを見送った直後、ワタナベくんは緑に電話をかけ、何もかもを二人で最初から始めたいのだと伝えます。長い沈黙が続いた後に、「あなた、今どこにいるの」と緑が口を開きます。

 プロローグにおいて、18年後のワタナベくんは、何故、緑についていっさい触れてないんでしょう。緑がワタナベくんを生の世界に踏み留まらせたのは間違いないです。ですがその後の2人がどうなったのかは、いっさい書かれていない、緑にすべてを打ち明けたうえで、恋人ととしての交際が始まったのか、直子を完全に忘れさせてくれる存在にと、緑は成り得たのか?

 僕は、この電話の後に2人は交際するどころか、会う事すら出来なかったんじゃないのかと思ってるんですよ。この作品の最終ページ最終行は、哀しいことにその可能性を十分に示唆しているんじゃないでしょうか?

 「僕は今どこにいるのだ。いったいここはどこなんだ。僕はどこでもない場所のまん中から緑を呼びつづけていた」。