村上龍 特権的情人美食 村上龍料理&官能小説集 6

 「神が見る風景でしょう?」。村上龍「特権的情人美食」、今日は「ニューヨーク・シティ・マラソン」からの出典で「コート・ダ・ジュールの雨」です。

 主人公の私はコンコルドに搭乗した際に機長よりコクピットからの風景を見せてもらいます。ゆるやかなカーブを描いて楕円に拡がる、右半分が昼で左半分が夜の地球。機長が言います。「神が見る風景でしょう?」。その光景に接した彼は言葉を失い、ひたすら涙を流し続けます。

 シティの金融界で投機家として名を馳せていた彼は、それ以来まったく仕事が手につかなくなります。あの光景の前ではすべてが幻にすぎないと悟るのです。ましてや為替や株式の値動きなど取るに足りないものだと。

 コンコルドから見る地球ってスゴいんでしょうね。アポロの宇宙飛行士が宇宙から地球を見ているのと同じです。これだけショッキングな映像を目にすれば、余程の鈍感でない限り自分の日常に何らかの変化が起きますよ。神が見る風景、僕もいつか見る事ができるのだろうか?