村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン 3

 村上龍「ニューヨーク・シティ・マラソン」収録の「リオ・デ・ジャネイロ・ゲシュタルト・バイブレイション」。舞台はカーニバル開催中のリオ・デ・ジャネイロ。主人公はF1パイロットのニキです。

 ニキはレース中のクラッシュで全身に大火傷を被い、静養のためにリオを訪れています。左半身のほとんどを被うケロイド痕が痛々しいのですが、それ以上にニキを苦しめているのは事故による恐怖心です。

 この作品のスゴさはリオのカーニバルの喧噪に尽きます。不快感極まりない湿気と暑さを伴いながら、炸裂する狂気として表現されるリオの街。この極限状態のリオの街は圧巻です。そしてニキの恐怖がリオの狂気と見事にシンクロしていくのです。

 この作品のニキとはニキ・ラウダの事であり、実際のニキはその後、顔のケロイドを晒しながらも奇跡的なカムバックを果たし、そして更に2回のワールドチャンピオンに輝いています。スゴい!