村上龍 半島を出よ 6

 村上龍「半島を出よ」の高麗遠征軍。この作品に入り込む際の最も基礎的な条件となるのが、彼ら北朝鮮コマンドたちのリアリティなんだと思います。

 彼らは北朝鮮の中ではエリートの部類ですよね。彼らエリートの生い立ちですら想像を絶する貧困の中にあります。這い上がるために彼らがした努力も日本人の許容限度を遙か超えています。ホントにこれが独裁国家の現実なのでしょうか。福岡制圧以上にリアリティが求められる部分です。

 もし独裁国家なるものをイメージ出来なければ、彼らにリアリティを感じる事が出来ません。彼らの人物像から何の感銘も受けないワケですから、彼らを主人公の1人として認める事も出来ません。その場合に「半島を出よ」はイシハラグループだけの物語になってしまうのです。

 これは損ですよ。3分の1を占める彼らの描写が、イシハラグループの行動に対する単なる説明部分に成り下がってしまうワケですから。