村上龍 55歳からのハローライフ (19)

 村上龍「55歳からのハローライフ」。「ペットロス」という短編は定年退職後の夫婦の話だ。自分のプログに夢中になっている夫と、寂しさを愛犬に注ぎ、愛犬が自分のすべてとなっている妻。夫婦の関係は既に壊れている。

 この短編から感じ取れる希望は、愛犬の死をきっかけにして、最後には夫婦の関係が再生していくのかなと思わせるところなのだが、その前段階として愛犬の死の扱いがあまりにハード過ぎて涙なしには読めない。

 我が家も6年前にペットを亡くした。アイリッシュセッターという猟犬だった。死因は老衰なのだが、その他に様々な事情があって僕も奥さんも未だに完全には立ち直っていない。新しくペットを飼うという気持ちにもなれない。村上龍もシェパートか何かの猟犬を飼っていたと思う。物語と同様の経験をしたのか、さもなくばそれを予期しているのか。単なる想像で書いているとは思えないほどリアルに感じる。気持ちが入った描写だと思う。

 当たり前の事だが、永遠の別れほど悲しいものはない。

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