村上龍 コインロッカー・ベイビーズ 8

 村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」。中学生になったハシは、デパートの屋上で行われていた催し物で、聴衆の中から偶然に選ばれ催眠術の被験者となります。「小さい頃に戻っちゃうのよ、うんと小さい赤ちゃんの頃に戻っちゃって、赤ちゃんになっちゃうの、どんな気持ち」と。

 これがハシの覚醒トリガーとなります。幼児の時に受けた催眠療法が効力を失い、眠っていた膨大なエネルギーが再び姿を現すシーンです。

 離島における平和だった暮らしも終わりです。ハシの場合はすべての根源が哀しみですから、読んでいてこっちまで胸が締め付けられるような痛々しさがあります。闇のエネルギーが渦巻く暗黒の世界に、崖の上から放り込まれるような感じです。ハシの覚醒は、苦悩の始まりにすぎないのか?

 ハシは学校にも行かず、誰とも口を聞かず、テレビを朝の放送開始から放送終了までつけっ放しにして、ある音を探すようになります。かつて精神医のもとで聞いたあの音です。ハシが持つ究極の聴覚はこうして生まれます。

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