村上龍 共生虫ドットコム 8

 村上龍「共生虫ドットコム」を読むと、僕が「共生虫」を好きなのはストーリーもさることながら、その文体にもあるのだという事がよく分かります。

 ウエハラくんが公園を横断していて、ストーリーと何の関係も無い公園内の人達を執拗に描写するシーンがありますよね。以前書いた検索エンジンの描写もそうなんですが、読んでいて頭がグラグラしてくるような、ホント不思議な感覚に囚われますよね。そして何故かカッコいい!

 作品を読んでいる時は、不思議な描写だなくらいにしか思わなかったんですけど、「共生虫ドットコム」で、情景描写だけでなく心理描写も混じっている。新しいモチーフには新しい文体が必要であると、龍さん本人が言及しているのを読んで遅ればせながら気付きます。僕はストーリーだけでなく文体をも含めたところで「共生虫」が好きなんだと。

 カギ括弧の事もそうですが、僕が無意識の内に不思議でカッコイイと感じていた事の裏には、龍さんの明確な戦略があったというワケです。