村上龍 走れ! タカハシ (1)

 一昨年の秋くらいからだろうか、ずっと僕を悩ませている問題がある。それは息子達が所属する少年野球チームがおそろしく弱いという事だ。

 なんだそんな事かと思うかもしれないが、当事者にとってこれほど辛い事はない。森のコミュニティのチームなので、そもそも選手の数が少ない。今年は9人だ。つまり全員がレギュラー。競争は存在しない。切磋琢磨などという現象は間違っても起こりようがない。そして試合は大敗が続く。

 一方で楽しければいいという意見もある。だがスポーツの本当の楽しさは勝つ事にある。去年まで3年間在籍した長男は、意気揚々と入団したのだが、次第に自信を失くしそのまま卒業した。敗けてばかりいるとすべての自信が奪われるのだ。長男本人の努力不足が問題の本質なのは分かっている。だがそう導く事が出来なかった僕はひどく落ち込んだ。

 今年僕はこのチームの保護者会長になった。チームにはまだ次男がいる。後悔のないシーズンを過ごしたいと思う。