村上龍 走れ! タカハシ (2)

 森のコミュニティの少年野球チームは、3年前にO さんの単なる思い付きで結成された。O さんは変人ばかりの森のコミュニティの中で、いつも必ず先陣を切る。そして厄介なことに皆がO さんに乗せられてしまうのだ。

 地域から寄付を集めユニフォームを揃え、野球経験者の大人を見つけては監督やコーチに就任してもらい、私立学校の遊休グラウンドを無償で借り上げ何もかもが順調に進んだ。ある事を除いては。

 子どもがいない。僕はチーム結成時からチームの練習に殆ど全て出ているのだが、時折ひどく落胆する事がある。集合してみたら、監督やコーチ・保護者の人数よりも、子どもの人数の方が少ない時があるのだ。

 今年チームは別の地域のチームと共同戦線を張った。そのチームも9人しか子どもがいない。思惑は一致している。大会などの公式試合には合同チームを組んで参戦しようと云うのだ。明日も合同練習が予定されている。ずっと敗けしか知らないチーム、今年何かが変わればいいと思う。