サディスティック・ミカ・バンド / 黒船

 加藤和彦が亡くなった。鬱病の悪化による自殺だという。

 本当に意外だ。加藤和彦から自殺とか鬱病などという言葉を連想する者が、いったいどれだけいるだろうか。僕の目にはいつだって活き活きと写っていたし、どの時代においてもカッコよかったし、彼の人生が羨ましかったし、あのように生きたいという手本のような人だった。

 高校1年の文化祭で、先輩のバンドがサディスティック・ミカ・バンドの「黒船」に収録されている「塀までひとっとび」を演奏した。これがとんでもなくカッコよく、それを機にミカ・バンドを聴くようになった。伝説となったロンドン公演の話を知った時には、胸のすく思いをした。ロックミュージックに敏感なロンドンっ子を、日本人がライヴパフォーマンスで魅了したのだ。この事実はティーンエージャーだった悩める僕にとって、とても重大な事件となった。

 国家や大きな団体の後押しがなくとも、人は単身海外に飛び出し成功を収める事が出来る、それを僕に証明してみせたのが加藤和彦だ。