橘玲 / タックスヘイヴン

 今までブログに書いた事はなかったが、村上龍を除いて最も好きな作家は橘玲だ。正確に言うと橘玲の小説が好きというより、金融・経済に関するエッセイが好きで、ほとんどすべての発言に手放しで共感してしまう。

 最近になって「タックスヘイヴン」という小説が刊行になった。小説としては3作目の作品になる。なかなか面白かった。最後まで一気に読めた。ただ一方で、「ああ、面白かった」で終わってしまいかねない、ある種の物足りなさを感じたのも事実で、処女作「マネーロンダリング」のような衝撃は無かった。

 「マネーロンダリング」は今から12年も前の作品で、2014年の本作「タックスヘイヴン」がそれに追いつけないのは、国際金融に関する自由度が圧倒的に少なくなっている事に起因しているのかもしれないと感じた。いくら橘玲と云えども、驚くような金融スキームを構築する事はもう出来ないのだろう。そう考えると「タックスヘイヴン」という言葉の魅力も、今後は失われていくのか?

 そんな事を思って読んだが、面白い事は確かで、傑作だと思う。