グレゴリー・ザッカーマン / 史上最大のボロ儲け

 あまりにベタなタイトルなので一瞬引いてしまうが、「史上最大のボロ儲け」は、もしかしたら今年読んだ本の中で一番面白かったかもしれない。

 この本は、リーマン・ショックを引き起こす事になったアメリカの住宅バブル、いわゆるサププライムローンの破綻に賭けて、1年間で150億ドルを稼いだジョン・ポールソンの実話だ。胸が痛くなるような緊迫した時間、想像を絶する緻密な調査、意外な戦略、圧巻の結末と、まるで映画のようだ。

 バブルの渦中にあって皆が踊っている時に、ひとりだけ違う行動をする。当然まわりの者から物笑いの種にされ、ファンドの顧客からは非難轟々だ。失敗すれば全てを失うという状況で、結果が出るまでの数年を耐え忍ぶ事になる。ここまで自分の信念を貫く事が出来たポールソンに心から惹かれる。

 株式の空売りなどというありきたりの手法ではなく、CDS というデリバティブを購入する戦略も面白い。リーマン・ショックとは何かという事が非常によく分かる本で、最高の金融ドキュメンタリーだと思う。