村上龍 オールド・テロリスト (19)

 村上龍の「オールド・テロリスト」は、最新号でまた新たな老人が現れた。この老人も今までと同様に一筋縄ではいかなそうだ。

 ところで主人公の関口は、この老人達に歯が立たない。いいところがまったくないのだ。この老人達と何とか渡り合っているのは、若くて美しいカツラギだけだ。優秀と思われていたマツノ君なんて、いつの間にか舞台からいなくなってしまった。結局、金と権力のある老人と若くて美しい女性、この2種類の人間だけが輝きを放っている事になる。小説の中だけでなく、現実の世の中もきっとそうなのかと思うと、関口と同世代の僕としては力が抜けてくる。

 「希望の国のエクソダス」の関口は、派手な活躍こそなかったものの、ポンちゃん達から絶大な信頼を得ていた。「オールド・テロリスト」の関口も、老人達から選ばれた人間なのだから、何か特別なものを持っているはずだ。

 そろそろ関口に動いてほしい。老人達が一瞬でも怯むような反撃をしてほしい。カツラギが関口に対してハッとする表情をするところが見たい。