朝井リョウ / 桐島、部活やめるってよ

 次男が部活を辞めたいなんて云うので、Kindleストア巡回中に、朝井リョウの「桐島、部活やめるってよ」に目が止まってしまった。次男の悩みに対する何らかの答えをこの小説に期待してみたのだ。だが答えは載ってなかった。

 というか、そもそも肝心の桐島くんが最後まで登場しない。おいおい、桐島は主人公じゃないの。部活を辞めるに至った心境を聞かせてくれよと、ずっと意表を突かれっ放しであったものの、実はかなり面白く読めた。

 この小説は、非常に多くの生徒達が次から次へと登場する。皆が何かしらの事情を抱え悩んでいる。だからといって過度にそれに立ち向かってみたり、或いは落ち込んでみたりはしない。現状を受け入れているわけではないが、けして暴れたりはしない。傍から見ればかなりスマートだ。そうやってやり過ごしている内にいずれ悩みは消えてなくなるのではないか、そう思える不思議なポジティブ感がある。どのような生徒にも必ず居場所がある。

 部活を辞める事くらい、別に事件でも何でもない。それが答えか?