フィリップ・K・ディック / アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

 映画「ブレードランナー」の原作として有名な、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」。最初に断っておくが、はっきり言って映画の方が面白い。だがこの原作には映画以上の奥深さがある。

 映画との一番の相違は、イジドア(映画ではJF・セバスチャン)の視点が重視されている点だ。イジドアは、放射能の影響による身体的欠陥からスペシャルと呼ばれ、普通の人間(レギュラー)とは明確に区別され、生きていく上で重要な権利を幾つも剥奪されている。尊厳が踏みにじられているのだ。

 人間とは何か、人間とアンドロイドを隔てるものは何か。この重要テーマとは別に、同じ人間であってもレギュラーとスペシャルが存在するという事実。不思議な事に、読者にとって一番人間らしく映るのがスペシャルで、次がアンドロイドだ。レギュラーの人間が一番冷酷で、まるで機械のようだ。

 動物を飼う事が人間らしい行為だとされ、人間が競って動物を飼おうとする。その行為自体が既に迷いの表れだと思う。区別する事の無意味さを知る。