鈴木光司 / リング

 次男がクラスの友人達と「貞子3D2」を観てきた。クラスではその話題で持ち切りらしい。僕はというと、自宅で鈴木光司の小説「リング」を読んでいた。

 小説の「リング」は想像以上に面白かった。映像がないので映画ほどの怖さはなく安心して読めるし、ストーリー展開のテンポも小気味よくて最後まで一気に進める。こんなに面白いなら、もっと早く読んでおけばよかった。

 「呪いのビデオを見た者は、一週間後に必ず死ぬ」。考えてみればこのプロットはかなり安易だ。科学的根拠がないのはもちろんだが、怨霊の仕業だとしても、直接手を下せばいいものを、わざわざビデオなんていう器具を使うのかという気もするし、一週間という時間をきちんと測った上で待つことの出来る怨霊というのも、真面目で几帳面過ぎると感じる。この小説は細部に渡って緻密によく出来ているのに、肝心なプロットだけが不思議なくらい幼稚なのだ。

 ところが最後まで読み終わると分かるのだが、このプロットこそリングの正体で、呆気にとられる見事な結末は、このプロットあってこそなのだ。