村上龍 テニスボーイ・アラウンド・ザ・ワールド (7)

 先週の日曜日、テニスの中学校県大会が行われた。前回の地区予選で神のようなプレーを続出し「オレは覚醒した」とまで言い放った中3の長男に、周りの誰もが期待した。家族、学校、地域の人を含め、まるでお祭り騒ぎで大会に臨んだのだが、長男は初戦敗退した。本当にあっけなかった。

 長男は全身に力が入りガチガチで、自分の力をまったく発揮出来なかった。前回地区予選の時とは雲泥の差。いったい前回の熱狂はなんだったのか。本人も含め観戦していた誰もが静まり返り、これほど居心地が悪いと思った事もない。もちろん本人にも言葉ひとつ掛ける事すら出来なかった。

 あれから一週間が経った。あの日で部活を引退した長男はボーとした日々を過ごしている。僕はといえばやっぱり何かが抜け落ちたようで、なんとなく毎日が怠い。でも実は頭の中では分かっている。長男の部活がかけがえのない素晴らしいものだったという事。最高の中学校生活になったという事。

 家族みんなで気持ちを切り替えよう。今日からそうしたいと思う。