村上龍 テニスボーイ・アラウンド・ザ・ワールド (4)

 4月、中3の長男のクラスにある生徒が転校してきた。長男の話によれば、以前の学校で不登校になってしまい、転校という道を選択したらしい。その生徒は、転向後すぐに長男と同じテニス部に入部した。

 僕は不登校と聞いて、テニス部部長である長男に云った。「スポーツはチームの和が大事なのだから、学校には来なくていいから部活にだけはちゃんと来いと言っておけよ!」。もちろん冗談のつもりで云ったのだが、それに対する長男の答えにビックリした。「奴は転校後すぐに、また不登校になっちゃったよ。でも、朝と夕方の部活にはちゃんと来てるんだよ!」

 なるほど、こういう形もアリなのか。後にテニス部の活動を見に行って分かった。テニス部は彼を受け入れている。彼の居場所があるのだ。あらゆる先入観を排除して、彼を素直に受け入れたテニス部をちょっと誇りに感じた。

 先週の地区予選、長男の中学校からは3ペアが予選を通過した。その内の1つは彼のペアだ。素晴らしい時間を過ごして欲しいと心から思う。