村上龍 コインロッカー・ベイビーズ (47)

 何となく読み始めてしまった村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」。アネモネが登場した途端に俄然面白くなると感じるのは僕だけだろうか?

 考えてみればもう2,3年も経てば、僕の息子達もキクやハシと同じ年齢になる。キクやハシの生き方がどんなにカッコ良かったとしても、息子達がキクやハシのようになるのは親として困る。そんな事を考えていると、昔のように手放しでキクやハシに感情移入するのは難しい。

 その点アネモネは違う。僕に娘がいないという事もあるが、どんなに若くてもそこは女性、やはり異性に対する目で見る事になる。そして案の定、惹かれる。アネモネの登場で俄然面白く感じるのも当然なのだ。

 アネモネのシーンで一番好きなのは、キクの法廷の場面だ。刑が軽くなるよう、誰もが法廷でのキクの優等生ぶりを期待する中で、アネモネだけがおとなしいキクに怒っている。「あんた、こんなのに騙されちゃだめよ!」。アネモネもまた、コインロッカー・ベイビーズの一員なのだとつくづく思う。