村上龍 55歳からのハローライフ (22)

 僕は自分の仕事をおおむね楽しくやっている。ではもう一歩踏み込んで、自分の仕事に誇りが持てるかと問われたらどうだろう?

 村上龍「55歳からのハローライフ」。短編「トラベルヘルパー」に登場する中年男が現在置かれている状況は悲惨なものだ。こうはなりたくないと思う反面、羨ましいと感じる点がひとつある。自分の仕事に大きな誇りを持っている事だ。

 男の職業はトラックドライバー。この男は云う、モノは運ばれる事によって初めて価値が生まれる。どんなに素晴らしいモノであっても、誰かが工場から店頭に運ばなければ何の価値も生まれない。この男はトラックドライバーという仕事を通じて自分は大いに社会に貢献しているのだと確信している。誰かの役に立つ充実感、誇りある仕事。なんて素晴らしい事なのだろう。

 自分の仕事に誇りが持てない僕のような人(多くがそうだと思うが)は、この惨めな中年男を笑う事は許されない。会ったら即座に頭を下げるべきだ。この男が自殺しなくて本当に良かった。こういう人こそ生きなければならないと思う。

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