村上龍 55歳からのハローライフ (18)

 5年ほど森の少年野球チームをやっていた関係で、多くの地域の皆さんと知り合う事が出来た。長野の山奥の森は楽しい人達でいっぱいだ。

 山奥に住んでいて淋しくないかと尋ねてくる人がいるが、淋しくなんかない、むしろうるさい。「今度地域で○○活動をするから手伝って欲しい」から始まって「飲んでるから早く来い」に至るまで、巧みに張り巡らされた森独自のネットワークにより、否が応でも捕まってしまう。そしてそのようなネットワークのハブになっている人達の多くが、実はリタイヤ組だったりする。

 誰にも取り柄はある。誰かしらが誰かしらを必要としている。地域のコミュニティというのはそんな連鎖で成り立っていると思う。会社を定年退職した後も、地域に関わる事で自分らしさを活かしたい。誰にでも居場所はあると思う。

 村上龍「55歳からのハローライフ」。「キャンピングカー」の主人公の男は、学生の頃やっていた柔道の腕を買われ、自治会の柔道教室の講師に誘われるところで物語が終わる。素敵なエンディングだと思う。