村上龍 55歳からのハローライフ (15)

 村上龍「55歳からのハローライフ」、「空を飛ぶ夢をもう一度」。昨日の記事にコメントをもらった。「主人公は旧友の尊厳を守ろうとしたんだと思います。それによって自身のプライドや尊厳を失わずに生きていけます。主人公は世間に、人間としての尊厳を堂々と示したわけですね」。

 なるほど、尊厳という言葉は浮かばなかったが、云われてみればまさにその通りだ。尊厳、いい言葉だと思う。主人公は、旧友の尊厳をギリギリのところで救う事により、決して失ってはならない自分の尊厳を死守したのだ。そしてそう奮い立たせたのが怒りの感情という事になるのだと思う。

 諦めるとか、受け入れてしまうとか、そういう事は人生の中で結構ある。それがすべて悪いわけではないが、人間としての尊厳を踏みにじられたら別だ。その時は主人公のように全身全霊で闘うような自分でありたい。

 「空を飛ぶ夢をもう一度」はあまりに暗い話だが、大きな勇気を与えてくれた。負けたくないと心から思う。最後の最後まで守り抜きたい。