村上龍 55歳からのハローライフ (13)

 村上龍「55歳からのハローライフ」に「空を飛ぶ夢をもう一度」という短編がある。好き嫌いを別にして、この本の中で最も印象に残った作品だ。

 実は最初に読んだ時、結構涙した。どうしてこんなに涙が出るのか、自分でも説明が付かなかった。とにかく不思議な感覚に捕らわれたのだ。

 この短編は死を扱っている。なので死と向い合うときに自然に流れ出る涙なのだろうと最初は思った。でも映画でも小説でも人が亡くなったからといってその都度泣いたりはしない。ホームレスと紙一重のような境遇に陥った主人公の男を嘆き悲しんでいるのかとも考えた。僕もそうなる可能性がゼロとは云えない。強烈な恐怖を感じたのも確かだ。そういった悲しみとか恐怖とかが涙を誘うのか。でもきっとそれだけではないはずだ。

 この短編を最近になって再読した。涙は出なかった。その代わり最初に読んだ時に気持ちが高揚し過ぎてよく分からなかった事が少しだけ分かった気がした。多分それが涙の理由だと思う。後日書いてみたいと思う。

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