村上龍 55歳からのハローライフ (5)

 村上龍「55歳からのハローライフ」を読んだ。それがヤバいほど面白い。何もヤバいなどという年甲斐もない言葉で絶賛しなくてもいいのにと思うかもしれないが、正直なところ本当に心からヤバいと思ったのだ。

 村上龍の書く小説はとにかく僕にとって片っ端から面白いのだが、ヤバいという感覚を持ったのは多分初めてだと思う。このヤバいを説明するのが難しいのだが、一言で云うと心に染み入ってしまったという事。劇中の登場人物に対して、読者である自分が見事に完全同化してしまったという事に起因する。登場人物たちの気持ちが痛いほど分かるのだ。そして本当にこれが痛い。キーンと痛い。これがヤバくないわけがない。

 思えば過去の村上龍作品に、これほど等身大の中高年はあまり登場していないのではないだろうか。クレバーで仕事が出来てお金持ちという設定が多かったと思う。今回の主人公たちはおそろしく平凡だ。だからヤバい!

 心のどこかで、僕はこんな作品を待っていたのかもしれない。

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