村上龍 憂鬱な希望としてのインターネット

 「おひさしぶりです。真犯人です。ミスしました。ゲームは私の負けのようです。捕まるのが厭なので今から首吊り自殺します。楽しいゲームでした。さようなら。また来世で」。

 PC遠隔操作事件の真犯人から、昨晩、報道機関に新たにメールが届いたらしい。不謹慎で申し訳ないのだがこの事件は本当に面白いと思う。

 この事件、実害のあった被害者はいない。実害があったのは、警察に誤認逮捕された何の罪もない一般市民4名とその家族だ。警察に十分な情報リテラシーさえあれば実害すら起きなかった。おまけに真犯人の告白によって初めて誤認逮捕が明らかとなる。真犯人が動かなければ冤罪となるところだったのだ。結果的に真犯人は先の4名を救った事になる。

 もし仮に真犯人が自殺しなければならないような致命的なミスをしていたとしても、警察はそれにすら気付いてないのではないだろうか。私の負けのようですという一文、逆に勝利宣言のように聞こえて仕方ない。