村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン (16)

 3週間ほど前、僕の住む高原を舞台に市民マラソンが開催された。2年前にスズメバチの来襲にあって、全国ニュースにもなった大会である。僕は地元ボランティアとして駐車場誘導を行い、そこで変なおじさんに遭遇した。

 受付に一番近い、既に満車になった駐車場でそのおじさんは吠えていた。ちょっと歩けば他に駐車場はあるのだが、近い場所に停めたいらしい。制止した僕たちに向かって猛然と食って掛かり、次々と文句を並べた挙句こう言った。参加してやっているんだから何とかしろ。誰のおかげで大会が成り立っていると思ってんだ。もう参加してやらないぞ。

 この大会の主催者は行政だ。大会に賛同した者だけが参加する事が出来る。一方、市民だからといって参加する義務は一切ない。この恩着せがましい態度はいったい何。常日頃の行政への不満の現れなのだろう。

 僕のいる前を通らないと受付には行けない。注意深く見ていたがその後おじさんはやって来なかった。せっかく来たのに走らなかったのか?

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