村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン (14)

 小学校の運動会はいつも最終種目が男子リレーだ。そしてこれがかなり盛り上がる。毎年皆で楽しみにしている。だが運動会を前に、我が家は今年重苦しい雰囲気に包まれた。次男がリレーの選手になれなかったのだ。

 次男は1年生から5年間ずっとリレーの選手だった。よりによって6年の今年、リレーの選手を逃すとは。選考会の日の夜、学校から帰ってきた次男は大泣きした。何か声をかけなくてはいけないと思ったのだが、恥ずかしながら僕自身落胆が大きく、気の利いた事はまったく言えなかった。

 翌日以降、次男は何事もなかったように普通に過ごしていた。過度な心配は不要なのだ、それより僕自身がまず気持ちを切り替えよう。そう思っていた矢先の昨晩、またしても次男が泣きだした。実は今朝からリレーの早朝練習が始まるのだという。補欠である次男は練習への参加義務がある。だがその場でレースを走る事は出来ない。それがたまらなく悔しいと訴えた。

 今朝、次男に一声かけた。少しでも届いていればいいが。