村上龍  「超能力」から「能力」へ (3)

 村上龍と山岸隆の対談集「超能力から能力へ」を読み終えて、僕はすぐに山岸隆の主催する団体であるパーフェクトハーモニー研鑽会に入会手続きをとった。目的は超能力アイテムが欲しかったからだ。

 山岸隆の持つ超能力は他人に伝える事が出来る。アイテムを介す事で、山岸隆のエネルギーを自分のものとする事が出来るのだ。つまりアイテムを手にした途端、僕も超能力者の仲入りという事になる。

 超能力アイテムをパーフェクトハーモニー研鑽会に注文してから実際に届くまでの間、僕はずっと興奮していたように思う。仕事も何も手につかなかった。一刻も早く手に入れたくてその事ばかりを考えていた。

 その日帰宅すると、ポストに宅配便の不在票があった。荷物の所在を知るために電話をかけまくり、そして車をとばした。なんでこんな時間にこんなところまで来るのかといった多少迷惑そうな応対の倉庫のようなところで、僕はついにそれを手にした。14年も前の事だが今でも鮮明に覚えている。