Beatles / Taxman

 80年代後半、社会人になったばかりの僕は会計事務所に勤めていた。バブル真っ盛りなのでほとんどのクライアントが大黒字で、脱税まがいの経理処理をするクライアントも少なくなかった。当局による税務調査が頻繁に行われ、駆け出しの僕は何度も冷や汗を掻き、寿命を縮める体験をした。

 実は今、僕が勤める会社が税務調査を受けている。僕は経理部なので、会計事務所を退職以来20年ぶりに税務調査に立ち会っている。でも20年前と違いとても気が楽だ。脱税はおろか節税すらしてないからだ。

 今の時代は上場企業であれば株主、非上場企業であれば銀行の顔色を一番重視する。なので納税額を減らそうと利益を過少にするのではなく、利益を過大にして実態よりも良く見せる事に躍起だ。つまり企業はすすんで納税しているのだ。当社には国税局と所轄税務署から10人以上の調査官が2週間も居座る。だがそれでもたいしたモノは出ないだろう。

 徴税者受難の時代が20年も続いている。そしてそれは悲しい事だ。