村上龍 それでも三月は、また (7)

 東日本大震災からちょうど1年という事で、昨日はTV で多くの特番が組まれていた。リモコン片手にチラチラと観てみたのだが、どの番組も同じようなアプローチだったように思う。きっとTV の宿命なのだろう。

 村上龍の「それでも三月は、また」を読み終えた。収録作の中に阿部和重の「RIDE ON TIME」という作品があった。10年に1度しかやってこないという、伝説の波を待ち続けるサーファー達の話である。

 同じ波だからと云って、東日本大震災をテーマにした短篇集にサーフィンの話はいくらなんでも不謹慎だろうと心配してしまった。伝説の波に闘いを挑むサーファー達の姿は気持ち良く、だからといってこの作品が東日本大震災に対するアンソロジーとなるのかどうか僕には分からない。ただこの作品から何かを感じ取れた読者も少なからずいるはずなのだと思う。

 「それでも三月は、また」には多様性がある。絆を前面に出せばいいというTV の画一性とは正反対だ。多様性には未来があると思う。