村上龍 裏JMMの海岸 Q:1254

Q:1254
 「日の丸半導体」とも呼ばれたエルピーダメモリが経営破綻しました。このことは、何かを象徴しているのでしょうか。

 DRAM の世界シェアは1位が韓国のサムスン、2位も韓国のハイニックス。エルピーダは3位。リーマンショック以降の信じられないウォン安と馬鹿げた円高を考えれば、エルピーダは為替に殺されたようなものだと思う。

 エルピーダは2009年に300億円の公的資金を受けている。同社の救済は国益にかなうという当時の判断だったのだろうが、結果だけを見れば血税である300億円が溝に捨てられてしまったという事だ。

 僕は同社に対して限りない悲壮感を感じてしまう。勝ち目のない闘いを強いられた兵士のようだ。いつの間にか日の丸を背負わされ、国が関与した事で経営の自由を奪われ、為替に対する国からの援護もなく、荒波の中を前進するしか許されなかった。直接の敵はサムスンと為替だが、そこまで追いやったのは国、そして関係者の古臭い日本人気質なのだと思う。

 同社には若く優秀な従業員と優秀な技術がたくさんあるはずだ。DRAM に固執せずとも、新しい発想でまた何か始められればいいと思う。