村上龍 オールド・テロリスト (9)

 村上龍の小説には、言い方が良く無いかもしれないが、頭のおかしな女性が登場する事が多い。特に90年代の作品に多い。「ラッフルズホテル」「イビサ」「ピアッシング」「オーディション」「ライン」「タナトス」等。

 頭のおかしなヒロイン達は、最初あまり僕の心を捉えなかった。だが村上龍を読めば読むほど、時が経てば経つほど、次第にシンパシーを感じるようになり、今ではその誰もが僕にとって非常に愛おしい存在となっている。たとえばこのような女性が現実に僕の周りに居たとしたら、それはかなり面倒くさい。出来れば関わりたくないと思う。だが小説の中では別だ。もし小説の中に僕が飛び込めるなら、僕は喜んで彼女達に逢いに行く。

 「オールド・テロリスト」には、村上龍作品としては久しぶりに頭のおかしな女性が登場する。カツラギという名だ。おそらくヒロインだと思う。

 この作品が最後まで彼女のガイドによって展開し、更に今後彼女がより一層自分を前面に出し、この物語をドライブしていく事を願っている。