村上龍 オールド・テロリスト (8)

 ある方からコメントを頂いた。老人という概念の固定化を疑えということです。ロックミュージックが世界を変革したり創造した時代に若者だった人が、今、老人として振り分けられることが適切なのか。

 村上龍「オールド・テロリスト」の中で、70歳代のテロリストと思われる老人が、主人公の関口にRolling Stones の「Satisfaction」を聴かせる場面がある。老人はこの曲をリアルタイムで聴いている、しかも20歳頃に。

 今まで僕は、老人というのは島倉千代子や都はるみを聴いているのだとばかり思っていた。Stones とは思いもよらない。だが考えてみれば当然で、時は刻々と流れている。ウッドストックの洗礼を受けた男の子がおじいちゃんに、ツイッギーに憧れた女の子がおばあちゃんになるのだ。

 僕も老人に対する画一的なイメージは捨て去るべきと思う。「オールド・テロリスト」のテロリスト達は、60年代のStones を知っている。少なくとも呑気な80年代に育った人達が勝てる相手ではない。彼らは相当に手強い。