村上龍 裏JMMの海岸 Q:1241

Q:1241
 万が一、ユーロが崩壊した場合、つまりEUおよび世界の金融市場が機能不全に陥った場合、どんな事態が起こるのでしょうか。

 ユーロとは不思議な制度だ。政治も財政も全く別の国々が通貨だけを統一している。ユーロ導入から10年も経って云うのもなんだが、よくよく考えてみれば経済学的にあってはならない制度なのではないだろうか?

 ユーロ圏でドイツの影響力が最も大きいのだとすれば、他の加盟国はドイツマルクに貨幣相場をペッグしているのと同じ事になる。これは昔懐かし固定相場制だ。通貨が市場に委ねられていない。自国通貨が高くなったり安くなったりする事で、様々な事が自動的に調整される。だがそれが出来ない。10年も経過すれば、隠れていた歪みが露呈するのも当然だと思う。

 ユーロが崩壊すれば、世界中が大クラッシュだ。だがユーロ崩壊と同時に加盟国がそれぞれ元の通貨を採用すれば、その通貨は市場によってそれぞれ落ち着くべき場所に落ち着く。本来あるべき姿に戻るのである。

 ユーロ崩壊と国債デフォルトは別の問題だ。ユーロが崩壊しなくてもデフォルトは起こる。あまりユーロ延命に固執しない方がいいのかもしれない。