村上龍 オールド・テロリスト (6)

 連載中の村上龍「オールド・テロリスト」の中にカラオケ教室が出て来たのだが、この教室に集う老人達が異様に元気だった。

 ウィークデイの昼間からお酒を飲み、感情たっぷりに演歌を熱唱し、小道具まで用意して踊りまで披露する。その元気度合といったら尋常でない。

 「オールド・テロリスト」はミステリーなので(多分)、理路整然とストーリーが展開している。もちろんそういう緻密な構築も村上龍の得意とするところなのだろうが、僕はこのカラオケ教室が登場した途端に村上龍っぽいと感じてうれしくなってしまった。村上龍は尋常でない人物を描くのが本当に上手いと思う。老人達が都会のビルの一室で繰り広げる光景から、「昭和歌謡大全集」に登場するおばさん達を思い出したくらいだ。

 「昭和歌謡大全集」が刊行された1990年代はおばさん達が元気な時代で、現在は老人達が元気な時代なのだと思う。今、中高年世代はあまり元気がない。更に輪をかけて若者達に元気がない。困った時代だと思う。