村上龍 心はあなたのもとに (4)

 村上龍「心はあなたのもとに」。今朝、出勤途中に小説の内容を思い出してしまい、朝っぱらだというのに涙がこぼれそうになった。ビルに囲まれた小さな公園で、木製ベンチに佇む西崎の姿を想像してしまったのだ。

 読み終えた後も、小説の世界が抜け切れない。この小説は僕に強烈な印象を残した。西崎と香奈子が生きた時間を、僕は丸ごとそっくり共有してしまった。ふたりの傍にずっと僕が付き添っていたかのようだ。けして長い時間ではなかったのだろうが、何年もそうしてきたように感じる。

 散らかった印象の前半と異なり、後半は様々な事が集約されてくる。香奈子の病気、西崎の仕事、そして香奈子に対する西崎の想い。胸が締め付けられるような切ない時間が流れていく。だがとても不思議な感覚なのだが、その切なさが嫌じゃない。むしろ心地良いのだ。

 その心地良さに、永遠に小説が終わらなければいいと思って読んだ。そして気づいたら、読み終えた後も僕の中で小説の世界が終わらない。

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