村上龍 心はあなたのもとに (1)

 一昨日の祝日、午後の時間が空いたので、ここぞとばかりに村上龍の新作「心はあなたのもとに」を読み始めた。ちょうど半分まで読めた。読了していないうちに言うのもなんだが、この小説、僕はかなり気に入っている。時間さえあれば今すぐにでも続きを読みたいくらいだ。

 「歌うクジラ」のような近未来SF を読まされた後なので、少々退屈に感じる読者もいるのかもしれないが、日常あまり無いような出来事を、あっさりと淡々と日常風に書いているところがたまらなく好きになった。的外れだと言う指摘を覚悟で、「テニスボーイの憂鬱」に似ていると感じた。

 僕はテニスボーイの淡々さが本当に大好きなのだ。優しさに溢れている点も共通している。ただテニスボーイが陽だとすると、「心はあなたのもとに」は陰だ。笑い転げる代わりに、じわっと泣きそうになる。

 この後大きな事件も起きずに、このまま穏便に小説が終わって欲しい。何故かそう思った。もちろんそうもいかないのだろう。