Paul McCartney / McCartney

 大学生の頃、風俗店でアルバイトした事がある。こう書くと誤解されそうだが、綺麗な服装でお店に出ていたとかそういう事ではない。事務として雇われたのだ。といっても掃除や使いっ走りの仕事の方が多かったが。

 ある日トラブルがあり夜中の3時まで帰れない事があった。終電も終わり家に帰れない僕に、その店の責任者だった社員のY さんが、レストランで食事をご馳走してくれた上で僕をアパートまで車で送ってくれた。

 Y さんは30歳前だったが頭が切れて威厳があった。ほとんど会話の無い食事の後に車に乗ると、車ではPaul McCartney の「McCartney」が流れていた。これほどドライブに合わないアルバムもないと思いながら、暗い窓の外を眺めていた。そのうち曲が「Junk」になった。とても美しいが、哀しいメロディを持つ名曲だ。「Junk」を聴くうちに僕はひどく落ち込んだ。こんな夜中に僕は何をやっているのだろう。自分の未来が全く見えていなかった頃の話だ。

 「McCartney」がリイシューになる。今なら普通に「Junk」を聴けるだろう。

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