村上龍 逃げる中高年、欲望のない若者たち (3)

 今日は小学6年の長男の卒業式だった。せっかくの卒業式だというのに長野は雪。しかも風が強く吹雪で、寒さも手伝ってまるで真冬。

 天候だけではない、先生の挨拶も来賓の祝辞も震災に対するお悔やみとお見舞いで始まり、晴れの舞台である卒業式に幾らかの影を落としていたと思う。僕は卒業式の最中も福島原発に何か起きなければいいと時折考えていた。後で聞いたのだが他の父兄の方々も同様だったようだ。

 コメントでも頂いたのだが、震災後の日本人の行動に対して海外では称賛の声が上がっているという。略奪や暴動が起きず秩序が整然と保たれているからだ。日本は必ず復興を成し遂げる、そう思える事が出来る。しかし原発の問題は別だ。今、世界が福島原発に注目している。日本の技術が問われている。何としても封じ込めに成功して欲しい。祈るばかりだ。

 何となく気もそぞろだった大人達をよそに、長男は今日の卒業式を満喫したと思う。何故なら、長男はこの学校が好きで好きで仕方なかったから。