村上龍 無趣味のすすめ (1)

 村上龍のエッセイは本当に面白い。小説と同様、ずっと楽しく読ませてもらっている。一昨年の今頃だと思うが、「無趣味のすすめ」というエッセイ集が出た。実はこの頃から僕の中で少し異変が起きた。

 村上龍はおかしな事をきちんとおかしいと云う。しかもかなりの辛口だ。僕は村上龍が何か云うたびに、そうだ、そうだと拍手を送った。自分がうっすらと感じていたような事を、容赦なく明快に言ってくれるからだ。いつも読んでいて爽快な気分になった。読んで直ぐさま元気になる事が出来た。

 ところがである、「無趣味のすすめ」では元気を奪われたのだ。そうだ、そうだという自分ではなく、そうは云ってもね、現実はなかなか大変で、村上龍の云うようにはいかないものなんだよと、エクスキューズする自分がいたのだ。この自分の反応にショックを受けた。村上龍に着いて行く事が出来ない。その事で社会から置き去りにされるような恐怖を感じたのだ。

 あれから2年、その時の感触はいまだ完全には払拭されていない。