村上龍 歌うクジラ (24)

 村上龍「歌うクジラ」の最終章。心の支えであった父親を失い、信頼していたヨシマツに裏切られ、もう一度逢いたいと思うアンとサブロウはいない。

 アキラをひとり乗せた緊急脱出用Eポッドの計器はすべて停止している。窓から見る宇宙は暗黒、外気はマイナス150度、酸素の残り時間は30分。あとは軌道上を漂うのみ。そしてアキラは寒さのため意識を失っていく。

 過去の村上龍作品をすべて取り出したとしても、これほど主人公は貶めた作品はない。この旅はいったい何だったのたか。アキラは何かを成し遂げる事が出来たのか。そもそもアキラの人生とは何なのか。ヨシマツに翻弄させられただけの人生ではないのか。最後に辿り着いた場所は絶望の淵。

 最終章を読むのは辛かった。全身から力が抜けてやりきれない思いに陥った。心が傷んだ。このまま小説が終わってしまったら立ち直れなかったと思う。ところがである、村上龍はそんな酷い事はしなかったのだ。本当に最後の最後、最終ページの最後の1行で、なんと僕を救ったのである。

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