村上龍 歌うクジラ (19)

 村上龍「歌うクジラ」の下巻をまた読んでいる。最初に読んだ時に上巻の面白さに比べて下巻がつまらないと感じたので、本当にそうなのか、どうしてそう感じるのか、もう一度自分なりに確かめたいと思ったのだ。

 とは云っても、再読する前からすでに分かっている理由がある。何故、下巻がつまらないか。それはアンが登場しないからだ。

 上巻の冒頭、あまりに無邪気なアンの登場の仕方は、否が応でもアネモネの再来を予感させた。待ちに待ったヒロイン、当然のごとく最後までアキラに同行するものとばかり思っていた。それが下巻のはじめに早々と姿を消し、最後の最後まで再登場はない。アンが去った後の淋しさ、アンが横にいない居心地の悪さ、楽しい事など起きそうもない雰囲気。

 主人公の気持ちは読者に伝わってしまう。別れた後もアキラはアンを思っている。読者も同様なのだ。作者である村上龍は執筆しながら淋しくなかったのだろうか。アンをもっと描きたいと思わなかったのだろうか?

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