村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン (13)

 大波乱のマラソン大会。学校側が持ち出した解決策は、目撃情報によって順位を決定するというものだった。子供達が自分の前の走者を申告し合い、その証言の最大公約数で順位が決定する。

 証言によって長男は6位に認定された。これで無事解決と安堵したが、そう簡単には済まなかった。異議申立てをする子が続出したのだ。トップ集団の中で4周と3周の子が混在し、更にゴール近辺の混乱により2周のみでゴールした子が相当数いたらしいのだ。確かに順位の認定は難しい。

 7位に認定された子の抗議が特に激しかった。この大会は6位までが入賞で、全校生徒の前で表彰される。この子のターゲットはもちろん6位の長男。困った学校側は折衷案を提示した。この日認定された順位は覆さないが、子供達のプライドを尊重し一週間後に再レースを行うというのだ。

 再レースで長男は順位を上げた。5位だ。だが長男の表情は浮かない。7位だった宿敵の子が4位に入ったからだ。世の中うまく行かないね。