村上龍 歌うクジラ (16)

 村上龍「歌うクジラ」。ほとんど多くの読者にしてみれば全くどうでもいい事なのかもしれないが、ガスケットスタジアムに於いて薬の売人によってアンが脚をしゃぶられてしまう場面に、僕は心の底から感動した。

 アンは仲間を救うため、売人の要求に嫌々応じる事となる。売人はアンの片脚を自分の膝の上に引き寄せ、爪でストッキングを破り、露になったアンの爪先を口に含む。売人の涎がアンの脚を濡らしていく。

 この場面、実は三重構造になっている。アキラとサツキの性交渉と、その時部屋に流れていたビデオ映像、その双方がアンの様子と同時進行で描写される。最も異常で病的なのがビデオで、次がサツキ。脚先をしゃぶられるという行為はそれだけで十分エロティックなのに、そこに他の2つのイメージが重なって投影される。全ての行為の対象がアンだという錯覚に陥るのだ。

 たすけてと思わず口に出るアン。これほど官能的な気分になったのは「エクスタシー」以来。僕はこの作品の中でこの場面が一番好きだ!

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